序章:赤く描かれた太陽──その色が語るもの──
なぜ、日本人は太陽を「赤く」描くのでしょうか?
きっとあなたも、子どもの頃に赤いクレヨンで太陽を描いたことがあるかもしれません。
でも、世界を見渡せば、太陽は黄色やオレンジで描かれることが多いのです。
実は、この小さな違いの中には、昔から受け継がれてきた、私たちの感性や価値観の流れが映し出されています。
無意識のうちに選んでいる色、
なんとなく居心地がいいと感じる空間、
言葉にできないけれど確かにある“好き”や“苦手”の感覚。
それらはすべて、私たちの奥深くにある、目に見えない「色の力」のあらわれなのかもしれません。
「感性」と「記憶」、
「自然」と「感情」、
「祈り」と「世界観」。
それらがどう繋がっているのか、そんな視点から世界を見てみたくはありませんか?
本書は、「色」を手がかりにして、心や魂と世界の関係を読み解く地図を描こうとするものです。
あなたの中にある迷いや違和感、まだ言葉にできていない「何か」──
それに形を与え、意味を見つける手がかりになるかもしれません。
どうか、この本の中に、あなた自身を見つめ直すヒントを見つけていただけたら嬉しく思います。

無(nils)と有(cross)──ゆらぎの中にある世界
この世界は、有であふれています。
手に触れられるもの、声に出せる言葉、名付けられた概念──
目に見えるもの、数えられるもの、並べられるものたち。
でも、ふと夜空を見上げると、そこには、
“何もない”ように見える、無限の空間が広がっていました。
星々が輝いているのは、その「無」の上にあるから。
無と有は、対立しているのではなく、きっと何か深く結ばれている。
そんなふうに感じることがあります。
太陽の光に満たされる昼と、暗闇に閉ざされる夜。
その切り替わりに、
私たちの心や精神の様子が静かに変わっていくのは、なぜだろう。
気分、感情、思考の深さ。
昼と夜とで、それらはまるで別の風景のように姿を変える。
その原因はどこにあるのか──
私は、科学や心理学、哲学や神秘学など、
さまざまな分野から「心とは何か」を探し続けてきました。
けれど、どの分野にも“近づけた気がする瞬間”はあるものの、
いつも最後には、なにか大切なところに触れきれていない感覚が残りました。
まるで、山を登っているけれど、山そのものが見えていないような感じです。
登り方が間違っているのか?
それとも、登る「ルート」が違うのか?
南から登れば、草原が広がっているかもしれない。
北から登れば、冷たい霧に覆われているかもしれない。
東から登れば、断崖絶壁が立ちはだかり、
西から登れば、神秘的な地底湖に出会えるかもしれない。
もし、真実が“山”そのものだとしたら、
どこから登ったかだけでは、その全体像には辿りつけないのではないか。

一枚の地図にたどりつくまで
この地図を描こうと思ったのは、
誰かに何かを示したかったからではなく、
ずっと心の奥にあった「なぜ?」を、私自身が確かめたかったからです。
心とは何か。
昼と夜がもたらす感情の違いはどこから来るのか。
見えるものと見えないもののあいだに、何があるのか。
科学や哲学、心理学や神秘学──あらゆる領域を横断しながら、
その“なぜ”をたどり続けてきました。
時に不思議な体験にも出会いながら、
私なりの感覚と思考を地図に描いていく日々。
この地図は、一度でできたものではありません。
何度も何度も修正を繰り返し、
削っては重ね、また削って、ようやく形になったものです。
この世界には、すでに多くの専門的な知見があり、
多くの優れたアプローチが存在しています。
でもそれでもまだ、足りないパーツがあるような気がして──
それを埋めるために、私にしかできない方法で、
空想や想像の力を使って補い続けてきたのだと思います。
造形物を作るように、
重ねて、削って、また重ねて。
どこが重要で、どこが余分なのか。
選ばれ、磨かれた場所は、最後にいちばん美しく輝きます。
その“輝きの軌跡”を、私はたどってきました。
そしていま、こうして一枚の地図として、ここに置いています。